ドウロ、トラズ・オズ・モンテス地方の愉しみ方

ポルトガルで所得税について知っておいたらいいと思うこと

2020/08/20
 
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2月になりました。オンライン登録されたレシートの認証期限がある月ですね。これをうっかり忘れて控除できずに終わった支出に悔しい思いをしたことがある人は私だけではないでしょう。ポルトガルでは、個人の所得に対して所得税が課せられます。個人所得に課税となれば、日本ならこのほかに住民税があるかと思いますが、ポルトガルでは所得税一本で課税されます。申告は、個別申告のほか、夫婦(事実婚含む)合算申告も可能です(第59条)。申告は、皆さんもご存知の通り、課税対象年の翌年4月1日から6月30日の期間にオンラインで行います(第60条第1項)。

所得税算定の流れとしては、総合課税の対象となる各カテゴリーごとに算定した所得を合算して、税率を適用し、更に税額控除を所定の限度額まで控除し、源泉徴収額・予定納付額の調整をして税額を算定します。これに、分離課税分の税額を足して最終的な納税額が決定します。

以下、カッコ内の条文は特に断りのない限り全てポルトガル所得税法CIRSを引用しています。

カテゴリーA(給与所得)

  1. このカテゴリーには、その名の通り給与所得が含まれます(第2条)。
  2. チップのような労働の対価として受領した金額につき10%の分離課税(第72条第7項)が適用される場合を除き、ポルトガル居住者のこのカテゴリーの所得は、基本的に全て総合課税の対象となります。
  3. カテゴリーAの主な控除可能額は、年間4,104ユーロと支払社会保険料のうち大きい方の金額、また本カテゴリー総所得の1%を上限とする組合費の150%相当額です(第25条第1項a)c) 第2項)。
  4. ポルトガル非居住者による給与所得は、25%で源泉徴収の対象です(第71条第4項a))。
  5. 年間8,500ユーロ未満の所得なら税務申告は不要ですが(第58条第1項b))、夫婦合算申告を選択している場合等一定の要件を満たす場合は、申告免除されないので注意が必要です(同条第3項)。

カテゴリーB(事業所得)

  1. 個人事業主やフリーランスの所得がこのカテゴリーに含まれます(第3条)。この所得を税務申告するためには、まず税務署又はオンラインで事業を開始したことを通知しなければなりません(第112条第1項)。
  2. 単発業務(ato isolado)もこのカテゴリーの所得になります。この場合、事業開始届を出す必要はありませんが、金額にかかわらず消費税の対象になります(要するに消費税課税対象の役務の提供なら収益総額の23%を消費税として納付するということですね)。そしてその金額がIAS(2019年は435.76ユーロ、2020年は438.81ユーロ)×4より低くその他所得がない場合、あっても源泉徴収所得の場合は、税務申告は免除されます(第58条第2項b))。但し、この場合でも、夫婦合算申告を選択している場合等一定の要件を満たす場合は、免除されないので注意が必要です(同条第3項)。
  3. この所得を計上するには、簡便法(regime simplificado)と組織的会計(contabilidade organizada)の2通りの方法があります(第28条第1項)。前者は、カテゴリーBに該当する収益に事業活動の種類に応じた係数を掛けて(要するに一律で適用される利益率を係数として見積もっているのですね)所得を算定します(第31条 例えば、日本語を教えるという事業活動を行っていると総収益の75%が当カテゴリーの所得となります)。後者は、会計士を雇って会計処理を管理してもらうという方法です。何も言わなければ通常前者が適用されますが、年間純所得が200,000ユーロを2期連続又は1期でも250,000ユーロを超えると後者の適用が強制されます(第28条第6項)。また、逆に、年間純所得が200,000ユーロに満たなくても、事業開始届の中で、又は当年3月末までに変更届を提出すれば、組織的会計を選択することもできるので(第28条第4項)、自分の事業の利益率を見積もって、簡便法で適用される定率と比較して、どちらを選択するか考えることも一つですね(別途会計士費用がかかることをお忘れなく)。
  4. 簡便法適用者のうち主に役務の提供者で、給与所得と退職所得がない場合、事業活動初年度・翌年度は、前述した適用される係数をそれぞれ50%、25%減少させることができます(第31条第10項)。そのため、もし12月に事業活動を開始しようと思っているけれど、翌1月に開始しても問題がないのなら、初年度の税制メリットを最大限生かすために1月を選択した方が節税の観点からはお得ということですね。
  5. 個人事業主所得(カテゴリーB)で顧客が一人(一社)だけの場合、カテゴリーA(雇用者所得)と同様の控除額を享受できます(第28条第8項)。本来的には、実質給与所得者(実質的には給与所得者と同じ働き方なのですが、雇用事業体がレシーボ・ヴェルデによる契約しかしてくれない場合を想定しています)を救済するための制度ですが、例えば所得税法151条所定の役務提供(専門職を含め様々な役務の種類が所得税法添付Ⅰで定義されています)を行っている場合、控除額から逆算して年間所得16,416ユーロ(≒4,104÷75%)未満ならカテゴリーAで所得申告した方がお得ということになりますね。そのため、所得水準によっては2人(社)目の顧客を受けるかどうかは、所得計算に大きく響いてくるので、要検討となります。
  6. あと、簡便法と言っておきながら最近導入されたかなり面倒臭い制度なのですが、カテゴリーB所得のうち役務提供による場合、所得総額の15%から社会保険料拠出額4,104ユーロを控除した金額について(逆算して27,360ユーロ超の年間所得がある場合に問題になるということですね)、実際に負担した金額があったことが証明できないと(このためにモノ・サービスの購入時に納税者番号を入れておき、後日オンラインで当該支払いが個人事業主所得を得るための費用であったかどうかを登録します)、証明できない金額は課税所得に加算されます(第31条第13項)。
  7. 年間3回(7月、9月、12月各月20日までに)予定納税をしなければなりません。納付期限の1カ月前までに通知され、納付額が50ユーロに満たない場合は免除されます(第102条第3項)。
  8. ポルトガルでも大流行りの民泊ですが、これは本カテゴリーB又は後述のカテゴリーF(不動産所得)のいずれで申告するか毎年選択し直すことが可能です(第28条第14項)。
  9. カテゴリーB所得は、総合課税の対象です。
  10. 組織的会計を適用した場合は、本カテゴリー内で欠損金が計上される可能性があります。この場合、当該欠損金は翌12年間に渡って本カテゴリー内の中で繰越控除が可能です(第55条第1項a))。

カテゴリーE(投資関連所得1)

  1. 投資関連所得のうち、本カテゴリー以外のカテゴリーに属さないものが、ここに含まれます。例えば、利息や配当金等のインカムゲインはここに含まれます(第5条)。
  2. ポルトガル居住者のカテゴリーE所得は、ポルトガル国内の金融機関からのものであれば、通常28%で源泉徴収されます(第71条)。但し、源泉徴収時に適用された税率ではなく、総合課税を選択して申告することも可能です(第71条第10項)。源泉徴収の対象でない所得分についても総合課税を選択せず、分離課税を選択することができます(第72条第1項d))。
  3. 日本同様二重課税を回避する目的で、IRC(法人税)が課税されているポルトガル又は一定の要件を満たすEU・EEA所在企業からポルトガル居住者が受け取った配当金については、総合課税を選択した場合に限り、その50%のみの課税となります(第40条-A)。受取配当金の分離課税は通常税率が28%なので、税率が所得金額により変わる(累進課税)総合課税の場合の結果と比較してお得な方を選択するのが賢い納税ということになります。

カテゴリーF(不動産所得)

  1. 基本的にアパートや家等の不動産の使用・賃貸に係る収益がこのカテゴリーに属します(第8条)。
  2. 不動産収益を得るために負担した費用は基本的に控除可能です。アパートなら管理費(condomínio費用)、建物のリノベーション後の賃貸を想定して、賃貸開始24カ月前の期間に発生した保存・維持工事費も対象となります(第41条第7項)。領収書等のサポートは残しておきましょう。尚、課税対象期間に発生したIMI(固定資産税)や印紙税はカテゴリーF所得から控除できますが(第41条第5項)、IMI付加税(所有不動産価額が一定額を超えると課税)はカテゴリーF内での控除ではなく、課税所得金額からの控除の対象となります(第78条第1項l))。
  3. 居住用として所有不動産を賃貸する場合、契約期間は2年以上にしましょう。不動産賃貸所得も、総合課税とするか分離課税とするか、納税者自身が選択できます(第72条第12項)。仮に分離課税とした場合は、原則28%の税率が適用されます(第72条第1項e))が、この税率は契約上の賃貸期間が2年以上なら、当該期間に応じて、最大18%までの軽減が可能です(第72条第2項~第5項)。
  4. 本カテゴリー内で欠損金が発生した場合は、本カテゴリー内の中で翌6年間に渡って欠損金の繰越控除が可能です(第55項第1項b))。

カテゴリーG(投資関連所得2)

  1. 同じ投資関連所得でも、カテゴリーGは資産価額の増加、主に不動産や有価証券等の譲渡益(値上がり益)と考えておけばいいでしょう(第9条)。損失と利益を年間通算した純益に対して課税されます(43条第1項)。
  2. 本人又はその家族のための居住用不動産の売却収入について、譲渡日の24カ月前から36カ月後までの間にポルトガル国内を含むEU・EEA圏内にある居住用不動産に再投資される場合(要するに住み替えですね)には、その再投資相当部分について課税を免除されます(第10条第5項)。但し、取得後12カ月以内に実際に居住していること等いくつかの要件を満たしていないと再取得を否定されてしまうので注意が必要です(第10条第6項)。
  3. 譲渡益は、売却価額(第44条)から取得原価(第45条~第49条)と付随費用(第51条)を差し引いた金額として算定します(第10条第4項a))。ちなみに、不動産の売却価額は、固定資産税評価額より低ければ、固定資産税評価額を使用することが要求されており、課税額の減少を意図する廉価での不動産譲渡取引を牽制しています(第44条第2項)。取得日と譲渡日との間が24カ月を超える場合は、取得価額を現在価値に引き直すための係数の適用をお忘れなく(第50条)。
    不動産購入に際しての税制はこちらをご覧ください。
  4. ポルトガル居住者の不動産や知的財産権等の譲渡損益及び(スワップ取引を除く)デリバティブ取引損益純額については、一定の場合を除いて、その50%のみを認識します(第43条第2項b))。但し、この場合、必ず総合課税の対象としなければなりません(分離課税の選択が可能です(第72条第12項))。このように、有価証券投資の場合、状況によっては(カテゴリーE所得として単純に総合課税を選択した場合)、インカムゲインより、キャピタルゲイン重視で収益を稼得した方がお得ということが起こり得ます。
  5. 非上場の小規模企業に対する持分については、利益のみ50%を認識します(第43条第3項)。
  6. 1989年1月1日より前に取得した株式等については、課税を免除されます。
  7. 所定の譲渡(値下がり)純損失は、本カテゴリー内の中で翌5年間に渡って繰越控除が可能です(第55条第1項c)d))。

カテゴリーH(年金所得)

  1. 退職・障害・遺族年金や養育費などの給付がこのカテゴリーに含まれます(第11条)。
  2. カテゴリーAと同様、年間4,104ユーロと支払社会保険料のうち大きい方の金額、また本カテゴリー総所得の1%を上限とする組合費の150%相当額を控除できます(第53条第1項第2項第4項)。
  3. カテゴリーA同様、年間8,500ユーロ未満の所得なら税務申告は不要ですが(第58条第1項b))、夫婦合算申告を選択している場合等一定の要件を満たす場合は、申告免除されないので注意が必要です(同条第3項)。
  4. 税率20%の分離課税を選択できる養育費(第72条第9項)以外は基本的に総合課税の対象です。

非常住居住者の所得税

非常住居住者とは、現時点でポルトガル居住者ですが、過去5年間ポルトガル居住者でなかった者で、科学的・芸術的・技術的高付加価値活動(所定の専門的職業従事者や投資家、企業役職者等)を行う者や海外年金受給者を対象として付与される優遇税制ステータスだと理解すればいいかと思います。居住者として登録後10年間税制上の優遇措置が受けられます(第16条第9項)。ポルトガル国外源泉所得については、その間、租税条約締結先の源泉国で所得税が課税されている限り、ポルトガルでは課税を免除されます(第81条第4項)。ポルトガル源泉所得については、総合課税を選択することも可能ですが(第72条第12項)、そうでない場合はカテゴリーA及びB所得には、20%の税率が適用されます(第72条第10項)。後述する税率を確認してもらえればこの優遇税制の適用を受けられることがどんなに意味のあることかが分かるかと思います。過去5年間ポルトガル居住者でなかったことが要件とされますので、後付けで適用申請をするのは非常に困難なことから、ポルトガル移住を考える際には、事前に必ず検討されることをお勧めします。

所得税の課税対象とならないもの

ポルトガルでは、宝くじなどの賞金は、所得税ではなく、印紙税の対象です。また、贈与も印紙税の対象ですが、直系尊属の相続は課税されません(おい・めいへの相続は印紙税の対象です)。このほか、軍人の恩給、文学賞、芸術又は科学賞の賞金、所定のスポーツ関連の支援金・報奨金・賞金等は、所得税の課税対象とはなりません(第12条)。

税率

ポルトガルは累進課税で、上記に基づき総合課税の対象になるものについては、14.5%から最大53%(年間所得80,000ユーロを超えると課税される付加税率分も含む)の税率が適用されます(第68条、第68条-A)。所得水準が日本に比べて高くないこともありますが、年間所得36,856ユーロで税率45%適用レンジに入ってくるので(日本では住民税が入ってくるので一概には比較できませんが、例えば36,856ユーロ≒4,423千円(1ユーロ=120円で換算)は日本の所得税率では20%のレンジにあり、住民税の所得割10%を考慮しても、重めですよね)、日本での所得をそのまま持ってくると比較的税負担が重くなる印象かと思います。

尚、カテゴリーA及びH所得については、総所得から税額を差し引いた額が1.5×14×IAS(2019年は435.76ユーロ、2020年は438.81ユーロ)に満たない場合、その部分については第68条の税率は適用されず、当該差額を税額から差し引いた残額が最終的な納税額となります(第70条第1項)。

源泉徴収

カテゴリーA所得しかない人は雇用者側がやってくれるので問題ないと思いますが、カテゴリーB所得のある人は、請求書(兼領収書)であるレシーボ・ヴェルデを発行するときに、源泉徴収をするかどうか聞かれると思います。このとき、何も知らないとどの基準を選択したらいいのか悩むところだと思いますが、もし年間の課税所得が1万ユーロ未満なら、所得税法上は源泉徴収をしなくてもいいことになっており、その権利を行使する場合は、「IRS第101条のB第1項に従い源泉徴収なし」を選択することになります。この1万ユーロは消費税の課税が免除される基準額でもあります。1千万円以下で納税が免除される日本とは格段の差ですね(涙)。

税額控除

税額控除については、こちらをご覧ください。

以上、ポルトガルの所得税法について大枠をまとめてみました。どなたかの参考になれば幸いです。

 

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