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最近、ポルトガルへの移住ってどうなの?ー税法上の影響

 
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最近、ポルトガルでは移住政策の動きが激しいですね。10月末ポルトガル居住の外国人にはお馴染みの移民局SEFが消滅し、その作業が今年新設されたAIMAをはじめとするいくつかの既存機関に引き継がれることになりました。今後は、居住許可の申請はAIMA、ポルトガル居住者である外国人による居住許可証の更新はIRN、ということでしょうか。

そして何よりも、海外からポルトガルに移住を考えている人にとっては相当大きな動きがありました。一定額を満たす不動産等の取得を通じた投資をすれば認められていたゴールデンビザの発給が10月6日に”Mais habitação (直訳するとmore housing)”の施行をもって終了しました(当該時点で申請済みのものは順次対応)。このビザの発給で、中国やブラジルをはじめとする相当数の外国人が不動産の購入等を通じてポルトガルの居住権を獲得してきたのだと思われます。私も以前何らかの会で会った人がたまたま不動産業界の人で、私の東洋人顔を見て、すかさず名刺を突き出され営業トークをされた覚えがあります(笑)。

ポルトガルとしては、当初、国内へのFDI(外国直接投資)の誘致を目的としたゴールデンビザだったのでしょうが、思いのほか不動産への個人投資(民泊を含む)が膨らみ、居住費の高騰で特にリスボンやポルトといった都市部には一般のポルトガル人が普通に住めないという問題が顕在化。これを政府が黙認できなくなった結果、今回の法令の施行、ひいては不動産等を通じたゴールデンビザの発給の終了に繋がりました。従って、今回終了になったのは不動産等を通じた投資に対するビザの発給であって、ポルトガル国内での雇用を生み出す本来的なFDIの効果を国が享受できるような投資に対するビザの発給はまだ継続しています。ちなみに、ポルトガルでリモートワークをしたい人用のデジタルノマドビザも存続しているようですね。但し、非常住居住者に対する税務上の優遇政策については、当時首相アントニオ・コスタが来年(2024年)終了の意向を示しています。

そして、今回この法令の施行に伴い、賃料の値上げが一定の例外を除き2%に制限されることになったほか、税法上の影響が生じていますので、個人的な独断と偏見に基づき関係のありそうなところを、以下確認していきたいと思います。

IRS(個人所得税)

[家賃所得の減税]
住宅賃貸借契約に基づく家賃収入のある人に朗報です。分離課税を選択して税務申告する場合(CIRS第72条第13項)の税率が、28%から25%に引き下げられました(同条第2項)。住宅以外の賃貸借契約家賃所得については、従前通り28%のままです。

更に、長期の住宅賃貸借契約の税率に関して、契約期間が5年以上10年未満、10年以上20年未満、20年以上につき、それぞれ15%、10%、5%になるなど、税率が下がっています(同条第3項~5項)。これらの税率は、同一物件につき従前の賃料より5%以上安く契約した場合、更に5%の追加的税制優遇が認められることになっています(同条第24項)。他方、住宅賃貸借契約が2024年1月1日以降に締結され、その賃料がPAAの一般的賃貸価格上限*の50%を超える場合には、前述の税制優遇の享受は認められないので(同条第23項)、注意が必要です。また、これらの税制優遇を受けている賃貸借契約について、賃貸人都合で当初の期間より早く賃貸借契約を終了させる場合には、ペナルティがありますのでこれまた十分注意が必要です(同条第20項)。

ちなみに、2022年12月末日時点において既に民泊登録をしている物件はありますか?これをもし民泊用から住宅賃貸借用に変更し、2024年12月末までに新規の住宅賃貸借契約を税務サイトに登録すれば、2029年12月31日までの家賃所得に対するIRS(個人所得税)及びIRC(法人税)が免除されます(EBF第74条-A)。この免除は、2029年12月末までの賃貸所得に対して適用されます(同条第2項)。尚、逆に民泊を継続する場合、固定資産税評価額の計算式を構成する乗数のうち、築年数が長ければ下がる係数(つまり建物が古ければ古いほど、固定資産税評価額が小さくなる)が今回の改正で常に1(通常は築年数により1以下で設定される)を取ることになる(CIMI第44条第3項)とともに、CEALという新税が創設され、民泊用アパートなどの独立区画に対して(内陸所在の民泊など一部免除要件あり)、該当する民泊の要素を考慮した係数に基づき算定された数値に15%を適用した金額が課税されることになりました(56/2023法第22条及び本条添付)。民泊は基本的に逆風ですね。

*:PAAは一定以下の所得水準の人に市場価格より低賃料で住宅供給促進を目指した住宅政策で、賃料の上限価額が当該賃貸物件の所在地(E1~E6に分類)とそのタイプ(T0~T5、T5超)により一覧化されています。従って、当該価額は市場価額より低めに設定されています。ちなみにこのPAAに関連して、住宅用不動産を国や地方自治体等に売却した場合に生じる利益は、原則(法定の例外を除く)IRS(個人所得税)及びIRC(法人税)が免除される(EBF第71条-A第7項)などの税制優遇が認められています。

[住宅の住み替え免税要件の追加]
従来より、自宅不動産売却収入で新たに居住用不動産を購入した場合に、一定の条件を満たせば売却益への課税の免除を受けられる再投資制度がありますが、その適用要件に以下2点追加されました。1つ目は、自宅売却までの24か月間、売却不動産を納税者またはその家族が自宅として使用していたこと(税務上登録されている住所を通じて証明)、2つ目は、自宅の売却により利益発生時の直近3年間、本免税制度を利用していないことです(CIRS第10条第5項e)f))。新しく購入した居住用不動産を、税務上の住所に変更することをお忘れなく(同条第6項e))。

ちなみに、通常本人または家族の住宅の住み替えが対象のこの制度ですが、2024年12月31日までなら(時限立法のため)、たとえ(自分が住むためでなく)賃貸物件(及び建設用地)の売却であっても、売却後3か月以内を条件に、自身またはその子供や(ひ)孫の住宅ローン返済に充てるなら同様の節税が可能です(56/2023法第50条第1項)。

IMI(固定資産税)

[住宅のIMI免除期間の延長]

固定資産税評価額が12万5千ユーロ以下の都市部にある住宅を取得(改築等を含む)した際に認められている3年間のIMI免除期間が、地方議会(assembleia municipal)の決議を受けて税務当局に通知されている場合、更に2年延長される可能性があります(EBF第46条第5項)。

また、自宅用不動産の固定資産税の算定に当たり、同様に議会の決議次第で、従前より世帯の扶養家族の人数により所定の控除が認められていますが、この控除額が増額されました(CIMI第112条-A第1項)。

前述した通り、民泊用不動産について、固定資産税評価額の計算式を構成する乗数のうち、築年数が長ければ下がる係数(つまり建物が古ければ古いほど、固定資産税評価額が小さくなる)が今回の改正で常に1(通常は築年数により1以下で設定される)を取ることになりました(CIMI第44条第3項)。築年数による課税評価額の減少の恩恵が受けられないという、民泊用不動産所有者にとって不利な改正内容となっています。

更に、都市部の空き家については、そもそも固定資産税について通常税率の3倍の税率が課される(CIMI第112条第3項)ことになっていますが、今回の改正都心部に至ってはその倍率が6倍から10倍に、以後の上昇率が10%から20%に上げられました(同第112条-B第1項))。また、付加税**部分についても増税となり、通常の60万ユーロの控除が認められない(つまり、60万ユーロ超過額部分ではなく総額に対して課税される)ことになりました(同第135条-C第4項)。

**:所有する全固定資産の総額が原則1人当たり60万ユーロ超の場合、その超過額部分に課税されます。

以上、税制改正をおさらいしてみました。どなたかのお役に立てば嬉しいです。

 

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