RNH終わった?2024年ポルトガル移住で使える優遇税制
2023年12月31日でブラジルや中国から多くの移住者を呼び込んだ非常住居住者制度(NHR)は一旦終了しましたが、実は日本人を含む外国人が使えるNHR制度が2024年度予算法で組み込まれている(2024年1月1日発効)ので、ちょっと紹介してみたいと思います。ポルトガルは気候も温暖、食べ物も美味しくて…だけの移住は、場合によっては丸腰で敵地に赴くようなもの、お金関係の事前武装はお忘れなく。特に稼ぎ盛りの事業所得者は、労働意欲を削がれかねないのでご注意を(笑)。
本制度は「scientific research and innovation(科学研究と革新)」に狙いを定めた優遇税制で、対象者は、高等教育および科学研究の教職者、投資税法所定の投資プロジェクトや認定を受けたスタートアップ企業の事業従事者や役員などが該当します(EBF第58条-A第1項)。従前の制度と比較すると、本来的なFDIの効果が認められる国家経済の発展に直接的に貢献してくれそうな人材に税制優遇を認めようという意図がより強化されています。登録申請には関連機関が関与するので、個人の意思さえあれば税務署サイトで申請してとれた従前のNHR制度より、大分ハードルが高い感じでしょうか。適用には過去5年間のいずれかの期間にポルトガル居住者でなかったことが条件となっています(同条第1項)。
では、具体的には、どのような所得税の優遇税制が認められるのでしょうか。
カテゴリーA(給与所得)及びB(事業所得)のポルトガル源泉所得については、居住者登録の時点から10年間、20%の特別税率の適用が可能です。総合課税の選択適用も認められています(同法同条第2項)。仮に途中で居住者資格から外れ1年以上本税制の利益を享受していなかったとしても、居住者資格を回復した時から残存期間に渡って優遇税制の適用が受けられます(同条第5項)。
また、上記に該当しない国外源泉のカテゴリーA(給与所得)、B(事業所得)、E(利子配当所得)、F(不動産所得)、G(譲渡所得)の所得については、条文上課税免除の適用を受けても、その他の所得に適用される税率を確定するために申告自体は要求されている点が明文化されています(CIRS第81条第4項)。尚、所得の源泉がポルトガル政府がオフショアとみなす国、地域等所在の事業体である場合は、35%の課税が行われることになっていますのでご注意を(同条第5項)。
このほか、過去にポルトガル居住者だった人を対象とする既存の優遇税制にも2024年予算法による改正が及び、これにより適用期間が延長され、2026年末までにポルトガル居住者になれば引き続き本制度の適用が認められることになりました(CIRS第12条-A第1項a))。本制度が適用されれば、CIRS第68条-Aの第一区分上限額(2024年3月1日現在250,000ユーロ)を限度として、5年間、カテゴリーA(給与所得)及びB(事業所得)所得の50%を免除された課税が認められることとなっています(同条同項)。この制度の場合も、過去5年間ポルトガル居住者でなかったことが条件となっています(同条同項b))。
今回ご紹介した制度は、まだ確定していない要素も含まれていて、誰にでも当てはまる制度ではありませんが、ご興味のある方がいらっしゃればご参考までに!