ポルトガルの所得税ー控除項目
注:こちらの記事は、個人所得税のうち控除項目に焦点を当てています。所得税の概要については、こちらを、法人所得に係る法人税の概要については、こちらを、不動産関連税制については、こちらをどうぞ。
そろそろ年末ですね。この時期、ポルトガルに住んでいる人なら、自分の税金アカウントにアクセスして、年間の控除項目の金額がどれくらいになっているか、取りこぼしはないか、見に行くのは私だけではないでしょう。この控除項目、日本でいうと、医療費などいわゆる所得控除の項目です。ポルトガルでは税率適用後の控除項目として取り扱われるので、ここでは税額控除と呼びます。以前こちらで触れたように、ポルトガルで所得税の税額控除として認められるためには、基本的にお店等でモノやサービスを購入して支払う際に、レシートに納税者番号を入力してもらうように頼まなければなりません(下表には当該性質から外れるものも含まれていますが、証憑を要求される点では同様)。
ちなみに、ポルトガルは日本に比べると一般的に所得水準が低いので(2017年平均賃金日本4,289千円、ポルトガル17,041ユーロ≒130円/ユーロ換算で2,215千円 per OECD stat)日本の感覚からすると比較的低レンジの所得に結構な所得税率が掛けられる上に、所謂基礎控除もなし。見方を変えると、日本の所得水準を維持してポルトガル居住者になると、日本以上の所得税を支払うことになりびっくりということも(ポルトガル所得税の概要については、こちらをご覧ください)。そのため、仮にこれから移住を検討する場合には、高度専門職や投資家等に支給されるビザ所持者に最初の10年間付与される特別な課税ステータスを享受できないか模索することになるでしょう。ただ、そんなステータスを享受できない、もう私はどっぷりポルトガル居住者です!となると、少しでも節税のために個人でできること、つまり、控除金額を頑張って増やすことになります。では、どんな控除項目があるのか見ていきましょう(2023年12月現在)。
尚、上限額は年間額で、カッコ内の税法条文は特に断りがない限りポルトガルの所得税法CIRSを引用しています。
1. 家庭一般費 |
負担額の35%を納税義務者1人当たり250ユーロまで(第78条-B第1項) これは基本的にどんなものでも該当するので最初はせっせとレシートを集めようとしますが、逆算してもらうと分かるように年間総支出714ユーロ(≒250÷35%)が上限です。従って、光熱費や電話・テレビ・インターネット費用で夫婦2人分1,428ユーロが十分に賄えてしまうので、通常は放っておいても控除額満額になることを開始翌年度以降になってやっと学びました(笑)。 |
2. 医療費 |
負担額の15%を1,000ユーロまで(第78条-C第1項) 診察料及び医者の処方箋のある医薬品代、眼鏡代、健康保険料等が対象になります。 |
3. 教育費 |
負担額の30%を800ユーロまで*(第78条-D第1項)、但し下記下宿代がある場合は、下宿代自体は300ユーロを上限、教育費控除限度総額は200ユーロ増額の1,000ユーロを上限(同条第11項a)) 授業料、教科書代、給食代、通学のための下宿(25歳以下で実家から教育機関まで50km超離れていること)の賃料が対象になります。 *:子供が通学する教育機関が内陸又はマデイラ・アソーレスに位置する場合は、所定の条件を満たすことを前提に、上記の負担割合が10%増し、かつ世帯当たり上限が1,000ユーロまで認められます(EBF第41条-B第11項)。 海外で発生した教育費については、別途(通常はモノ・サービス提供者が請求書に購入者のNIFを入力することにより自動的に登録)オンラインで入力申告できます(同条第8項)。 |
4. 不動産費用 |
以下の負担額の15%を以下の上限額まで(第78条-E第1項) RAU又はNRAUの下で締結された恒久的居住用建物賃貸契約に係る支払賃料を502ユーロまで* 但し、所得税率表の最低ライン額から30,000ユーロまでの所得者には、上記それぞれ、800ユーロ、450ユーロを上限として所定の数式のもと割り増しされます。 *:恒久的居住地を内陸に移した結果発生した場合は、所定の条件を満たすことを前提に、契約締結から3年間上限1,000ユーロの控除が認められます(EBF第41条-B第12項)。 |
5. 請求書要求 |
以下のサービスの対価に係る付加価値税(消費税)の15%を250ユーロまで(第78条-F第1項) 自動車・バイクのメンテナンス・修理代 上記獣医診療代には医薬品の代金も含まれ、これについては付加価値税(消費税)の35% 但し以下については、サービスの対価に係る付加価値税(消費税)の100% 公共の交通機関定期(回数)券代及び切符代(同条第3項) |
6. 高齢者・障害者ケア(ホーム)費用 |
負担額の25%を403.75ユーロまで(第84条第1項) 最低賃金収入のない被扶養者、第3親等内の親族分まで認められます(同条第2項)。 |
7. 養育費 | 負担額の20%で金額的制限なし(第83条-A第1項) |
8. 主な税制上のベネフィット(上記5以外) |
FPR/PPR(年金貯蓄):積立額の20%を年齢に応じた限度額(35歳未満:400ユーロ;35歳以上50歳未満:350ユーロ;50歳以上:300ユーロ)まで(EBF第21条第2項) |
9. 扶養 |
世帯を構成する被扶養者1人当たり600ユーロ*(第78条-A第1項a)) 世帯を構成する(最低年金額に満たない)尊属1人当たり525ユーロ**(同条同項c)) *:課税対象年度12月末時点3歳以下の場合、126ユーロ増額され726ユーロ(第78条-A第2項a))、2人以上いる場合で課税対象年度12月末時点6歳以下の場合、300ユーロ増額され900ユーロ(第78条-A第2項)) **:尊属1人の場合は110ユーロ増額され635ユーロ(第78条-A第2項c)) |
10. 障害者 |
障害者1人当たりIAS×4、扶養者が障害者の場合、IAS×2.5(第87条第1項) 障害者の教育費・リハビリテーション費用の30%を上限なしで控除可能(同条第2項) |
但し、上記のうち2~8の費目総額については、所得税額から控除できる納税義務者1人当たりの金額の上限が決まっています。それが以下になります(第78条第7項)。
1) 所得税額が税率表最低ライン(2023年12月現在7,479ユーロ)以下:制限なし
2) 所得税額が付加税がかかる最低ライン(2023年12月現在80,000ユーロ)超:1,000ユーロ
3) 所得税額が上記1) 2)以外の場合は所定の数式に当てはめて所得税額に応じて1,000ユーロ超2,500ユーロ未満の枠内で算定されます。
尚、納税義務者でない被扶養者が3人以上いる場合には、1人当たり5%ずつ加算されます(第78条第8項)。
最後に領収書の認証を忘れずに。これを忘れると、原則、申告書上での控除が認められません(但し、一部の項目につきマニュアルによる入力申告が認められています(第78条-G)が、その場合も証憑の管理はお忘れなく)。期限は毎年変わりますが基本2月中です。領収書発行主体が複数のサービスを提供している場合(例えば、パステラリアでは店内で食事を提供するサービスと単にパン等を販売するサービスの2種類のサービスの提供が考えられますね)、領収書はe-faturaのサイト上保留状態になっていて、控除金額に取り込まれていません。フリーランスや個人事業所得がある人もその所得が仕事と関連して発生しているのかどうか領収書の認証が必要です。
Comment
ポルトガル税制の情報を探していてこちらにたどり着きました。日本語の情報があって嬉しいです。NHRも取れたようなのですが、分からないことだらけです。突然訪れてこう言うのも不躾なのですが、ポルトガル税制についていくつか質問させていただけないでしょうか。
メッセージありがとうございます!返信遅くなって本当に本当に申し訳ありません!ブログ管理者本人が認めるのも何ですが日々の雑事にかまけてしばらくブログを放置、メッセージを頂いていることに気付いておりませんでした‥、本当にごめんなさい!遅くなりましたが、まだ何かお役に立てそうなことがあれば、サイトのお問い合わせメールアドレス(admin@goen-portugal.com)まで直接ご連絡頂ければ幸いです。