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ポルトガルで不動産を取得するときに知っておいたらいいことー不動産関連税制

2024/02/23
 
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ポルトガルに住むとなると、家を購入したり、又は住み替えということもあるかもしれません。また、長く住めば相続を含め無償で不動産を取得することもあるでしょう。そんな時に役に立つかもしれない税法関連の情報を集約してみました(以下2020年8月19日現在の税法に基づきます)。

ちなみに、個人の住み替え時に、住み替え前の不動産を譲渡して利益が出るなら、譲渡日の24ヵ月前から36か月後までの期間に自身(世帯家族)の恒久的居住用不動産(HPP:habitaçaõ própria e permanente)を購入すれば、譲渡益のうち再投資の割合に応じて所得税の課税を免れますので(CIRS第10条第5項)、譲渡益が発生した年度の申告書上その旨(譲渡益の繰り延べ)をきちんと意思表明しましょう。その場合、税務署へ届け出ている税法上の住所が住み替え前の家の住所であることが重要です。

仮に、居住用不動産取得のために、所有する賃貸中の投資不動産を売却して売却益が出た場合は、所得税が課税されます。その場合、28%の分離課税(CIRS第72条第1項e))を選択するか、居住者なら総合課税を選択して優遇税率の適用を受けるか(CIRS第43条第2項)になります。譲渡益の算定上、付随費用等の減額や、売却不動産の取得価額を現在価値に引き直す係数の適用をお忘れなく(CIRS第50条)。所得税についてはこちらをどうぞ。ちなみに、再投資に係る優遇規定は法人税についても存在します(CIRC第48条)。

それでは、ポルトガルで不動産を取得するとなると、どのような税金が発生するのか見ていきましょう。尚、ポルトガルでは不動産の購入に付加価値税(IVA:日本の消費税に相当)はかかりません(CIVA第9条第30項、CIS第1条第2項)。

1.IMT

IMTはポルトガル国内にある不動産の有償譲渡(一部例外あり)につき不動産取得者に対して課税されます(CIMT第2条第1項第4条)。日本の不動産取得税に相当すると考えるといいかもしれません。この譲渡の概念は広くて、一般的な不動産の取得だけでなく、取得したばかりの不動産や用益権を行使中の不動産を譲渡する約束、賃貸物件の所有権移転特約付き賃貸借契約、30年超の賃貸借・転貸借契約、不動産の権利を第三者に譲渡できるとする特約付き不動産譲渡の約束契約又は当該契約上の地位の譲渡、不動産や株式等の譲渡権を委任する放棄不能な代理又はその代理権の譲渡、不動産の交換や相続で本来の取り分を超えて不動産を取得した場合のその超過分等に課税されます(同第2条)。

IMTは、自身の恒久的居住用不動産(HPP)を101,917ユーロ以下で取得する場合には、課税されません(同第9条)。不動産を購入する際のIMTは基本、取得価額又はIMI(固定資産税)課税標準のいずれか大きい方に従い発生し(同第12条第1項)、廉価による不動産取引でIMTを免れることができないようになっています。

税率は、用途・種類・金額に応じて、特別な場合を除き最大6.5%が適用されます(同第17条第1項)。HPP用都市不動産取得の場合が一番優遇されており、金額を確認したい場合は、“Simulador de IMT(IMTシミュレーター)”でネット検索して、用途と価額を入力してみるとすぐ分かります。尚HPP及びその他居住用資産の取得として優遇税率を享受する場合は、取得日から6カ月以内にHPPとして居住を開始し、売却の場合を除き6年間当初の用途通りの居住を継続することが要求されるので注意が必要です(同第11条第7項)。

IMTの申告は、登記前にオンライン又は税務署で行います(同第22条第1項、第21条第2項、第19条第1項)。相続等の場合は、IS(下記参照)を申告する税務署で申告することになります(同第21条第3項)。納付は原則、申告日又は翌営業日までに行う必要があります(同第36条第1項)。譲渡取引が海外で行われた場合は、納付は申告翌月中となります(同第36条第2項)。

2.IS

ISは所定の行為・契約・文書等について発生する税金で、直訳すると印紙税です。ただ、日本で文書に貼って支払う印紙をイメージすると、ポルトガルではそれよりは広範囲に渡り、印紙は存在せず、税務署に直接納税します。ここでは、タイトル通り、不動産に係るISについて触れたいと思います。

ポルトガル国内にある資産につき(CIS第4条)、その所有権及びその他部分的権利(ex. 用益権、地上権)の有償取得があった場合や時効取得を含む無償取得があった場合に、ISの課税対象になります。前者については不動産の取得者(同第2条第3項)、後者については相続人を含む受取人(同第2条第2項)にISが課税されます。但し、ここでの相続人には配偶者(事実婚含む)や直系尊属・卑属は含まれず(同第6条e))、該当するのは、例えばおじ・おばからの相続です。

課税標準は、有償取得の場合、IMTに従い(同第9条第4項)、無償取得の場合、原則譲渡日におけるIMI課税標準、これがない場合は、評価額・契約価額のいずれか大きい方に基づきます(同第13条第1項第2項)。税率は、有償取得の場合0.8%です(同第22条第1項)。つまり、家を購入した場合は、基本的に購入価額(>IMI課税標準と仮定)に0.8%を掛けた金額が支払うべきISとなります。無償取得については10%、かつ不動産(の権利の)の譲り受けの場合は前述の0.8%も上乗せして適用されます。尚、無償取得に係るISについて、法人適用はありません(同第1条第5項e))。

有償取得の場合の申告及び納税はIMTの規定に準じて行われます(同第23条第4項、第44条第4項)。無償取得で前述の0.8%の上乗せが適用される場合については、別途細則が定められています(同第23条第5項、第25条、第45条)。

3.IMI

(2023年”Mais habitação”の改正についてはこちらをどうぞ)

IMIは、ポルトガル国内にある不動産(CIMI第1条第1項)で、固定資産税台帳に基づき、課税対象年の12月31日時点の所有者に対して課税されます(同第8条第1項)。日本の固定資産税に相当すると考えるといいでしょう。

ポルトガルでは、世帯総所得がIAS年間額の2.3倍(16,398.17ユーロ=509.26×14カ月×2.3)を超えず、当該世帯に帰属する不動産のIMI課税標準総額がIAS年間額の10倍(71,296.4ユーロ=509.26×14カ月×10)を超えない場合、HPPのIMIは免除されます(同第11条-A第1項)。また、税額が10ユーロ未満なら免除されます(同第113条第6項)。

また、このほか、以下の条件を全て満たした場合は3年間、課税が免除されます(EBF第46条第1項)。
・前年の世帯所得が153,300ユーロ未満
・自宅として建物を購入(建築・増改築含む)、取得後6ヶ月以内の入居と目的使用
・取得した固定資産税評価額が125,000ユーロ未満(一般に購入価格より低いので、必ず確認しましょう)
入居(引き渡し完了)後60日以内に税務署に届出が必要(オンライン可)です。

IMI課税標準は、面積・用途・立地・設備状況・築年数等により所定の数式で算定され、これに税率を掛けた金額がIMIとなります。税率は、特別な場合を除き、都市不動産なら0.3から0.45%で(同112条第1項c))、納税は対象年翌年、以下に従い行います(同第120条第1項)。
金額が100ユーロ以下の場合、5月に一回払い
金額が100ユーロ超500ユーロ未満の場合、5月と11月の2回払い
金額が500ユーロ超の場合、5月、8月、11月の3回払い

ちなみに一人当たりの課税標準額が60万ユーロを超える不動産については、その超過額部分につき更に付加税がかかります(同第135条-C第2項)。課税対象年1月1日のIMI評価額に基づき課税されます(同第135条-C及びG各第1項)。税率は原則、法人が0.4%、個人が0.7%です。更に個人については、課税標準額が1百万ユーロ超2百万ユーロ未満の場合は1%、2百万ユーロ超の場合は、1.5%と税率が上昇します(同第135条-F)。尚、この付加税については、夫婦合算課税を選択適用することもできます(同第135条-D第1項)。納付は当年9月に行い(同第135条-H第1項)、所得税・法人税上、控除が認められています(同第1条第2項)。

 

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