ポルトガル非常住居住者の所得税
6月に月末期限の所得税の申告書を埋めながら、1年経っただけで結構改正があるなあと思ったので、遅まきながら税法改正のおさらいをすることにしました。そう、私は世に言うオタク、この歳で税法学びに、わざわざバスで片道1時間もかかるポルトの大学まで足を運び修士に勤しむオタクオバチャンなのです。テメエのようないい加減なヤツと一緒にされたくないわ!と世の中のもっとまともなオタクの皆様、気を悪くされたらごめんなさい。
所得税法をちらっと見てみると、2020年の改正では非常住居住者(と勝手に訳しています)の税制に結構変更があったのですね。ウィルスと共存というこんなご時世なので、この時期に日本からポルトガルに移住します!という方は少ないかもしれませんが、「非常住居住者」とは一体どういうものなのか、そして、どんな税率が適用されるのかについて、まとめてみたいと思います。
まず、「非常住居住者」とは、所得税法CIRS第16条第8項で、税務上の居住者要件(同条第1項第2項)を満たすものの、直近5年間ポルトガル居住者(=納税義務者)でなかった者と定義されています。この「非常住居住者」には、居住者登録が認められた年から10年間税務上の特権が付与されます(同条第9項)。そして、本資格は自動的に得られる訳ではなく、当該居住者登録後、居住者登録の翌年3月31日までに税務サイトでオンライン申請をすることが税法上要求されています(同条第10条)。目的は高付加価値活動を行う職業を有する外国人、年金所得者を集めてポルトガルへの投資を誘致することにあり、一般に知られるゴールデンビザと対になっています。
では具体的には、どのような税務上のメリットがあるのでしょう?以下、税率を見ていきたいと思います(以下ポルトガル所得税法をCIRSとします)。ここでは、非常住居住者に適用される税率を、海外源泉所得とポルトガル国内源泉所得とに分けて整理した上で、ポルトガル国内の一般居住者の税率と比較しています。尚、非常住居住者資格は10年経過後喪失しますので、それ以降はポルトガル国内の一般居住者と同様の税率が適用されることになります。
非常住居住者所得税率 |
ポルトガル居住者一般所得税率 | ||
カテゴリー | 海外源泉所得 |
ポルトガル |
|
A(給与所得) | 他国で適切に課税されていれば課税を免除(CIRS第81条第4項) | 高付加価値活動から稼得された所得の20%(CIRS第72条第10項)1 |
最大48%までの累進課税(CIRS第68条)による総合課税 |
B(事業所得) | 高付加価値活動につき、他国で適切に課税されていれば課税を免除(CIRS第81条第5項) | ||
E(利子配当所得) | タックスヘイブンを除く他国で適切に課税されていれば課税を免除(CIRS第81条第5項) | 28%(CIRS第72条第1項d))の分離課税 1 | |
F(不動産所得) | 28%(CIRS第72条第1項e))の分離課税 1 | ||
G(譲渡所得) |
28%(CIRS第72条第1項c))の分離課税 1 |
||
H(年金所得) | 10%(CIRS第72条第12項)2 | ー | 最大48%までの累進課税(CIRS第68条)による総合課税 但し、年間所得80,000ユーロ超部分は更には2.5~5%の付加税課税 |
- 総合課税(上記カテゴリーA・Bポルトガル居住者一般所得税率参照)を選択することも可能です(CIRS第72条第13項)。
- カテゴリーH(年金所得)については、源泉国で課税されない上、ポルトガルでも課税されないのでは不公平だと非難の対象となり、2020年に10%が課税されることになりました。
- 非常住居住者のカテゴリーA(給与所得)及びカテゴリーB(事業所得)については、たとえ課税の対象にならない場合でも、その他の総合課税が適用される所得への税率の決定に影響を及ぼすため、申告書に記入することが要求されています(CIRS第81条第7項)。
所得税の申告時には、Anexo Lの添付をお忘れなく。